技術領域 / 電子リニア制御弁

電子リニア制御弁は、一般的に電動弁、電子膨張弁と呼ばれています。
しかし、不二工機はその先駆者の誇りをもって電子リニア制御弁と呼んでいます。  

電子リニア制御弁(電動弁)は、冷凍サイクルのあらゆる回路の冷媒流量を自動的に制御する中核機器です。特に更なる省エネを目指すルームエアコンやパッケージエアコン、冷媒の細かな制御が必要なビル用マルチの室内外機などでは必要不可欠な自働制御機器です。

 膨張弁は、温度による気体の膨張・収縮を利用して機械的に冷媒の自動制御を行っています。故障しにくく、高耐久性が求められるカーエアコン分野では主流ですが、インバータ・エアコンや環境試験機の厳密な温度管理のためにマイコン(コントローラ)を利用したより細かな冷媒自動制御が必要となり、ステッピングモーターで弁の開け閉めを行う電子式の膨張弁が開発されました。

 不二工機が、電動弁ではなく電子リニア制御弁という呼び方にこだわるのは、最初に開発したE形が、4相パルスモータと内蔵ギアを組み合わせることにより、全開から全閉の状態まで最大2000分割の実質的無段階で冷媒の流量制御が可能なことによります。極限まで細かな制御にこだわるエンジニアの姿勢の表れが「リニア制御」という言葉に込められているのです。   

 シリーズとしては前述のギア式の他、500分割の直動タイプもラインアップしています。また、電子リニア制御弁(電動弁)は、室内で使用されることも多いだけに静粛性は重大なポイントになります。ここでも膨張弁で培ってきた不二工機の静音ノウハウが如何なく発揮され、ルームエアコンメーカーから高い技術的評価と品質に対する信頼をいただいており、この分野における圧倒的トップシェアという結果につながっています。

 各種冷媒への対応はもちろんですが、近年では自然冷媒(CO2)対応が大きな課題となっています。環境にやさしいノンフロンの自然冷媒ですが、フロンよりも数段厳しい耐圧性が求められ、技術的難易度は際立っています。不二工機ではテクニカルセンターに自然冷媒専用の実験設備を増設し、技術的障壁をひとつずつ突き破ってきました。その成果がCPM形・HPM形電子リニア制御弁に結実しています。CO2を利用したヒートポンプは、その省エネ性能の良さからエコキュートとして導入が進んでいるのはご承知のとおりだと思います。その中核を不二工機の電子リニア制御弁(電動弁)が担っているのです。

 また、従来は自動車で電子リニア制御弁(電動弁)が使われることは希でしたが、プラグインハイブリッド車や電気自動車ではエアコンサイクルでの暖房機能も求められており、ルームエアコンのように冷暖兼用のヒートポンプが搭載されるようになっています。電池という限られた電力を有効に使うためにも電子リニア制御弁(電動弁)の利用は必須です。自動車の振動など過酷な使用環境での信頼性を高め、さらに効率の良い電子リニア制御弁の開発に不二工機は取り組んでいます。